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海辺のカフカ

星、八つ

15歳の誕生日を迎えた日、父親から現金40万などを盗んで家出をする。この設定はあまりにとっつきにくく最初は読みにくかった。でも事実の事件を元にしたフィクションが織り込まれた辺りから徐々に慣れ、15歳の感情に共感する場面が増え、ユニークなキャラクターが登場するごとにどんどんのめり込んでいった。

3つの異なるストーリーが展開されながら、それらが少しずつ絡み合っていく。
物語の中盤で大島さんがこんなことを言っていた。

「想像力を欠いた狭量さ、非寛容さ。ひとり歩きするテーゼ、空疎な用語、簒奪(さんだつ)された理想、硬直したシステム。僕にとってほんとうに怖いのはそういうものだ。僕はそういうものを心から恐れ憎む。なにが正しいか正しくないか、もちろんそれもとても重要だ。しかしそのような個別的な判断の過ちは、多くの場合、あとになって訂正できなくはない。過ちを認める勇気さえあれば、大体の場合取り返しはつく。
しかし想像力を欠いた狭量さや非寛容さは寄生虫と同じなんだ。宿主を変え、かたちを変えてどこまでもつづく。そこには救いはない。僕としては、その手のものにここに入ってきてもらいたくない。僕はそういうものを適当に笑い飛ばしてやりすごしてしまうことができない」
激しく同感だ。

すべての事柄に意味があるのではなく、さまざまな事柄が関連性をもって、それらがつながって物語は終わる。

風の音を聞こうと思う。そこに「海辺のカフカ」のメロディーがあればいいなと願う。

review 2007.11. 9

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